2013年4月12日金曜日

MAN構築のすすめ(3:調達編)

さて、今回は調達編です。


調達の話をする前に、そもそもダークファイバーなんて本当に自分のオフィスやデータセンターに引けるの?と思っている方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、BFLETSがインストールできるサービス提供エリアであれば少なくともNTTのファイバーを引きこむことができます。
ここで問題です。NTTから見た時、引渡しポイント(デマケーションという)はどこかということです。要は、NTTとしてはここまで自分たちのインフラですという分界点があります。
一般的にその場所はPDと呼ばれるファイバーの成端箱です。

ネットワーク管理担当者で中規模、あるいは大規模のオフィスにお勤めの方であれば、PDボックスあるいは、光成端箱というのをみたことがあるかもしれません。(写真のリンクを参照)
http://www.hitachi-cable.co.jp/ICSFiles/cable/fiber/h_kousei.jpg


ビルやデータセンタのサイズや、規模により異なりますが、大きめのマシンルームで回線数が多い場合、大概、マシンルーム内、または同じフロアのEPSやユーティリティ室などに設置されています。
一般的には大きいビルの場合、道路の洞道や共同溝から、通信用の配管がビルの地下に敷設されそこを通ってビルの共通MDF室などに収容されることが多いですが、大きめのマシンルームを設置している場合、そのマシンルームにPDを設置している場合もあります。

NTTが分界点として引渡しポイントとして指定する場所は通常はPDになりますので、そこまで光ファイバーケーブルを敷設して、自分たちのネットワーク機器があるラックまで光ファイバケーブルを引かなくてはなりません。(詳細はまたあとで述べます。)

BFLETSなどをインストールした実績があるマシンルームやラックがすでにあれば、物理的な引き込みは可能ということはほぼ確実ですが、通常は現地調査が必要です。


ではとっても基本的な問題に入ります。どうやってダークファイバーを調達するかということです。
通常はそういった芯線貸しを前提としたサービスを提供する業者に委託することになります。
(もしあなたが企業のIT管理者なら、NTT東日本や西日本に直接調達申請することはほぼ不可能です。ただしあなたの会社が通信事業者として登録していれば話は別ですが。)
ほぼといった理由はなぜかというと、電気通信の法律が改正され、以前は免許制だった通信事業者としての登録が免許制から届出制に変わっているからです。
もし、あなたの会社が大きなIT部門を持っており、企業規模が大きいなら、IT部門を通信事業者申請登録するという手もあります。そうすればNTTのデータベースに直接アクセスし、空き状況を確認したり、オンラインでダークファイバーの借り上げ申請を行ったりすることができます。ですがこの方法は一般の企業のITにとってはあまりに面倒です。
それよりは、旧来の第二種事業者や通信インフラ事業者に一括調達を依頼することをおすすめします。
以下に何社かそういったサービスを提供している事業者を挙げます。
なお、ダークファイバーの調達にあたっては、現地調査が必須であり、業者によっては見積もりをとるために導入前の調査を依頼しただけで費用がかかる業者もあるようですのでそれぞれの事業者に費用はお問い合わせください。(筆者は費用面での責任は負えません。)

丸紅アクセスソリューションズ(旧グローバルアクセス)
https://www.marubeni-access.com/ja/service/network/

TOKAIコミュニケーションズ
http://www.broadline.ne.jp/network/fiber/

協和エクシオ
http://www.exeo.co.jp/jigyou/ni/dark.html

東急電鉄
http://www.tokyu.co.jp/contents_index/information/index02.html

NECネッツエスアイ
http://www.nesic.co.jp/solution/nw/hikari.html



見積もりを依頼する際、例えば引渡しポイントがビルの地下のMDF室で、オフィスフロアが3Fの場合、ビルの構内配線を事業者に依頼して、自分たちの希望する引渡しポイントまでケーブル工事をして貰う必要があります。責任分界点については各社のアカウントマネージャに相談することをおすすめします。

なお、現地調査の際はビルのMDF室に入りたいとかEPSを調査したい(通信用配管、ビルを縦に通信ケーブルが走るルート)といったことが現地調査時に発生します。
予め総務の関係者、またはビルの管理事務所に相談し、必要なアクセス届けを出しておくと良いでしょう。通常はビルの管理会社が、必要箇所の鍵を持ちながら立ち会いを行うと思います。
(鍵を開けてもらわないと、現地調査ができませんので)


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よくある質問。

1)ダークファイバーってセキュリティーはどうなの?
  昔の2線式アナログ電話であれば途中に盗聴装置を仕掛けて通話内容を盗み取るということは比較的簡単に行えましたが、光の場合は物理的に電磁波の漏れなどはないためこういったことは起こりません。光信号の外部からの盗聴は事実上不可能です。

2)ほんとに安いの?
  やすいかどうかはあなたのネットワーク機器でどのような帯域のネットワークを構築するかによります。例として東京メトロの場合、インナーゾーン(23区の中心部)の場合、年額固定で409,500円です。(月3万円強、ただしラストワンマイル含まず) 
http://www.tokyometro.jp/corporate/business/optical_fiber/fee/index.html

この値段を安いと見るか高いと見るかは読者の皆さんにお任せします。
仮に23区内で1GBのサービスを通常の通信事業者に専用線ベースでオーダーしたらどれくらいでしょう。実際はアクセス区間の料金を足し見てなくてはいけませんが、一般的に両端のインターフェイスを10GB以上、あるいはCWDM、DWDMなど、帯域を増やせば増やすほど、ダークファイバーのほうがお得感が出ます。

3)ネットワーク監視(インターフェイスのアップダウン、断線等が心配)
  基本的にダークファイバーは自分たちのネットワーク機器を拠点AとBで1芯、または2芯のファイバーで接続しているのと同じ事ですから、断線の監視は自分たちで行うことになります。(ファイバー提供事業者は電送機器を一切、間に入れないのでファイバー提供事業者に断線監視を依頼することは不可能)
ただし、予定されているファイバー迂回や切り替え工事など、事前にファイバの断線が予定される場合、事前通知をもらうよう、契約業者を取り決めをしておくとよいでしょう。でないと、ある日突然回線が落ちるなんてことになりえません。

4)ダークファイバーって電柱使うんじゃないの?地下でないと自然災害や事故が心配
  これは一理あります。結論から言うと、都心部だけならあまり電柱を使うチャンスは無いと思われますが、郊外にいけばいくほど電柱の使用するケースは増えてくると思われます。もし極力地下構造で接続したい場合は最初に事業者に依頼する時、そういった業者を使って欲しい旨、希望を出すのもひとつの手です。最近は都心部は電柱の地下化が進んでおり、幹線は地下を通ることが多いようですが、こればかりはわかりません。でも、仮にBFLETSなどのインターネットVPNや専用線ベースの光サービスを依頼しても同じ事がいえます。(通信事業者がケーブルがどこを物理的に通して接続しているか、通常、エンドユーザーは知ることができない。)
事業者は通常、セキュリティー上の理由からファイバー経路を教えてくれません。もし地下のケーブルインフラを希望ならば、発注の前に要望として受託業者に伝えるか、でなければ地下にファイバーを敷設している事業者を使うよう、依頼をかけるのもひとつの手です。


5)納期はどれくらいかかる?
  これは調査次第ですが、幹線および最寄りPDにファイバーの空きがあり、構内配線だけを工事する程度なら3ヶ月程度で接続できる場合が多いようです。これも使用する事業者、区間、工事の複雑さなどによります。調達業者によく相談することをおすすめします。


6)複数の事業者を使っても本当につながるの?また事業者同士の接続は?
  最初にも述べましたが、日本国内で敷設されている通信用ファイバーはG.652 という規格で定められており、相互接続が一般的です。(でないとそもそも事業者間で相互接続できない)
最近はデータセンター需要のため、DSFという規格のファイバーもありますが、こちらは長距離電送を得意とする規格で互換性がないわけではありません。この辺りは依頼する調達業者に必ず確認しましょう。(通常、データ通信向けといえばG.652でつないでくれます。)また、事業者間にも当然、分界点があります。都合よくつながるように接続ポイントがあれば良いですが、なければどこかの業者が異なる業者同士のファイバーを繋ぐく必要があります。(例。事業者の局舎内でファイバーパッチコードは誰が用意して接続するかなど、このあたりの面倒な作業は依頼した事業者にお願いして任せると良いです。特にNTTの電話局内での接続は限られた入館者のみ可能で、一般の人間は立ち入りできませんから必然的に調達事業者にお願いすることになります)

7)自分が用意したXenpakやSFPが光を認識するか心配だ。叉強すぎたらどうする?
  シスコに限らず、SFPやその他のモジュールは何デシベルまでの信号は許容範囲とスペックに記載があります。回線を見積もってもらう際、想定される減衰値(例:-12db)などを予め、机上で計算値を出しておいてもらい、それに対応したモジュールを選択し、想定値より多少光が弱くても通信できるようなモジュールを選んでおくとよいでしょう。光信号が逆に強すぎる場合はアッテネータを入れることで光のレベルを下げることができます。契約する際、アッテネータもいくつか念のため契約に入れておいてもらうと良いでしょう。

8)距離が遠すぎて光信号が届かなそう
  都心部内の接続であればこういったことはあまり起こらないと思いますが、少し郊外に出てしまうとで距離に寄っては減衰が予想以上に大きい場合があります。ダークファイバーを調達する事業者は、実績ベースでこことここをこのルートでどこその事業者を使えばこれくらいという経験値を持っています。距離が遠くて心配な場合は中継アンプを入れるラックを借りると良いでしょう。ただし、事業者に寄っては中継サイトを持っていなかったりしますので、見積もり依頼する時、アカウントマネージャにまたは営業担当者によく相談することをおすすめします。
また、中継アンプを置くスペースを借りる場合、それに支障があった時、誰がトラブル・シューティングするか、サイトへのアクセスはどうするかなど、また違った懸念事項が発生します。
中長距離電送をダークファイバーを繋ぐ場合、このあたりの運用面の課題をちゃんと取決めをしておく必要があります。
通常、23区内であればアンプはほぼ必要ないといって差し支えないでしょう。
また、事業者が融着でファイバーを接続してくれるか、それともコネクター接続かによっても減衰値が変わってきます。(NTTは一般的にコネクタが多いと言われているので減衰量も多く、数百キロ以上遠くへ飛ばそうとすると中継アンプがたくさん必要になる)

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なんだかここまで話していると、NTTを使わずにいられないという感想をお持ちの方も多いかもしれませんね。
中規模か大規模の企業なら、通常、回線は2重化し、片方はNTT系、片方は他社としている場合が多いので、通常はNTTのダークを通じてファイバーを導入できると思いますが、もう一方の他社がファイバーを貸してくれない業者だとお手上げです。


以上、今回は調達にまつわるお話をしました。
また次回に続く。









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