2013年4月12日金曜日

MAN構築のすすめ(2:予習、雑学編)

前回の投稿ではMANとはなんぞや、というあたりから始めましたが、またよくわからないという方も多いと思います。
今回はすこし脱線も含めてわれわれを取り囲んでいる通信インフラの話をして行きたいと思います。

<FTTH構想>
みなさんはFTTH構想というのをきいたことがあるかもしれません。FTTHとはFiber to the Homeの略。 光アイバーの高速ネットワークをご自宅まで、というコンセプトですが、NTTが電電公社から民営化されて、しかも利益のでにくい過疎地までファイバーを引っ張るのかとおもいきや、NTTもさすがに利益を求める企業であることから、日本の片田舎の隅々まで、という構想は実現できずに事実上、構想は破綻しています。
ですが、この隙間を埋めるように、地方自治体が自前でファイバーを引いたり、テレビの地デジ化に合わせ、同軸線でCATVを引いてみたり、と。必ずしもすべての家庭にファイバーが引っ張られているという状況ではなくなりましたが、代替の手法で高速インターネットを提供する自治体も出始めました。また、昨今の無線技術の進化(WIMAX,LTEなど)により、光は諦めて無線の方に投資する動きも出始めています。確かに無線のほうが投資効果としてはファイバーを電柱や共同溝に張り巡らせる必要もなく、安くて早いですから、家庭用のインターネット用途であればこれも悪いアイディアではありません

しかし企業のネットワークはどうでしょう。無線は実際に使用出来る帯域幅が刻々と変化し、周辺の電波事情に影響を受けます。外回りの営業マンがタブレットやノートパソコンを使うのならともかく、営業所や拠点間のネットワークに無線を使うのはいかにも頼りないですよね。


<都市部のファイバーは誰が提供している?>
さて、ここではダークファイバーを借りる話をする前に、どんな事業所や通信事業者がファイバーを敷設しているか見て行きましょう。また、時代の変遷の話も交えながら紹介します。

-NTT東西、COM、DOCOMO
言わずと知れたNTTグループです。NTT COMやDOCOMOも実は広範囲ではありませんが限られたエリアで自前のファイバーを敷設しています。
通信事業の法律により、NTT東西は、未使用の空き光ファイバー芯線やメタル線がある場合は、原則、他の通信事業者から借用申し入れがあった場合、これを賃貸することを断ることができません。(ただし自社のサービス用途で予備芯線などに限りがある場合はこの限りではないようですが)
幹線は400芯とか、800芯とか、太いケーブルを引いているケースが多いので、よほど需要の多い区間でない限り、空きをみつけることができます。
また、事業者としてNTTのホームページに登録すれば、どこの局舎とどこの局舎の幹線にどれくらいの空きがあるか知ることもできます。もちろん、この情報は守秘義務で守られており、われわれ一般人が知ることはありませんが。

DOCOMOは自前のLTEやWifiなどの携帯向けアンテナ設置のために引いているケースが多いようですが、芯線貸しを行なっているかどうかはわかりません。

NTTコミュニケーションズ(コム)は原則すべて自社のマネージド・サービス向けで、NTTグループ内の融通はしているかもしれませんが、他の事業者への芯線貸しはおこなっていないようです。
余談ですが、2000年台初頭、クロスウェーブという通信事業者が存在し、この会社は低価格で自前で引いたファイバーとNTTなどのダークを組み合わせて使い、当事安価のギガビットやファイバーチャネル回線を提供していましたが、会社が破綻し、NTTコムに買収されてしまいました。買収されて以降、当事のクロスウエーブ資産もコムに移管し、それ以降芯線貸しは行わなくなったようです。

-KDDI

言わずと知れた旧国際電信電話を前身とした会社です。実はこの会社も多くの事業者を吸収、統合した背景が有り、とても複雑ですが、他の事業者への芯線貸出は行なっているようです。
この会社の所有するインフラは複数あります。

+国際電信電話時代から所有する自社のファイバー。(あまり多くないようです)
+旧日本高速通信のインフラ(高速道路沿いケーブルを敷設し、通信サービスを提供していた事業者
+第二電電のインフラ
+DDIセルラー、IDOなどの旧携帯電話事業者が所有していたファイバ(上記と同じか一部重なるかも???)
+東京電力がかつてTEPCOひかり、または旧東京電話というサービス名称で敷設していたファイバー。
+同じく東電が所有していた旧パワードコムという通信事業社が所有していたファイバー
  (どちらも元は東電由来の資産、多くは旧東京電話のインフラと重なる)
+昨今では連結子会社化したJCOMケーブルTVの所有するファイバ
  (ここはまだ事業が完全に統合されているわけではなく、KDDIの完全な管理下には無いと思われますが)

KDDIはその割合として東電や他の電力会社が旧来所有していたファイバーを引き継いでいつケースが多いようですが、地方については正直あまり情報がありません。



-ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル

この会社は今でこそ大手通信事業者ですが全身はKDDIと似ていて数社のインフラが引き継がれています。ただし、自社所有のインフラとしてはそれほど大規模に敷設しておらず、NTTなどから借り上げるケースが多いようです。

+旧日本テレコム系の所有するインフラ
  昔の国鉄鉄道電話(現在のJR)を母体にした通信インフラが元になっているようです。
+旧ボーダフォンが所有するインフラ
+旧MCI(米国にかつて存在した通信事業者)の敷設したインフラ
  ほかにもあると思いますがソフトバンクに関してはあまり情報がありません。事業者間の貸し借りは行なっているようですが確証はありません。

ー鉄道事業者
 +東京メトロ
  地下鉄のトンネルを使ってファイバーを敷設しています。
 +私鉄各社(東急、小田急、京王、西武、東武、京急、京成など)
  一部私鉄は、空き芯線を自社で100%使用し、提供不可能な事業者もあるようです。
 +都営地下鉄(東京都)
 +横浜市営地下鉄(横浜市)
 +中部、および関西圏の私鉄
  JRは基本、芯線貸しは行なっていないようです。

ー政府または地方自治体
 +東京都水道局(下水道)
 +国土交通省(河川管理、ダム管理、道路管理などのファイバー)
 +その他地方自治体(IRU契約で町とか村とかのファイバーを借りられることもあるようです)


ー大手ケーブルテレビ各社

ー旧来の第二種通信事業者
 +丸紅アクセスソリューションズ
  (旧グローバルアクセス、国際回線事業者と組んで自前のファイバーも整備しているようです、かつて東京ガスもファイバーを敷設した形跡がありますが、グローバルアクセスがかなり早い時期に通信事業は東京ガスと協業でやっていたようですが、東京ガスはこの分野からは撤収してしまったようです。)
 +KVH 
   (KVHは都心部は自前も持っているようですが(都内の道路によくKVHのマンホールの蓋を見かける)、基本100%自社利用で貸出はおこなっていないようです。)
 +トーカイ
  関東圏から中部、関西圏にかけて自前のファイバーを幹線に敷設しているようです。貸し出しも行なっています。


ー電力系事業者
 +Kオプティコム (関西電力系)
 +それ以外の電力各社の系列会社(北電、東北インテリジェンス、中部、北陸、四国、中国など、各電力会社がそれぞれ出資した通信子会社を抱えていますが、最近はKDDIが引き継いでいるケースも見受けられます。)
 +JPOWER (自社が所有する発電所や送電鉄塔、架空高圧線、変電所沿いにファイバーを張り巡らしています)

電力会社は高圧線の幹線に電力線と変電所などの管理用のファイバーを併設していることが多く、ほぼほとんどの電力会社がファイバーインフラを持っています。


ー丸の内ダイレクトアクセス
 三菱地所系の通信事業者。エリアは丸の内近辺に限られるが三菱地所の地下インフラを利用してファイバーネットワークを提供しているようです。




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他にもファイバーを貸してくれる事業者はあると思いますがだいたい上記のカテゴリ(旧第一種通信事業者、同第二種、鉄道会社、電力系、政府や自治体などのガバメント系)に分類されると思います。

こうやって見ると、多くの事業者がファイバーを敷設していることが分かりますが、自分の会社が使いたい拠点間を接続したいとなると、どうしてもNTTをどこかに使わないとエンド・トゥー・エンドでの接続は難しくなるようです。NTT以外で広く展開しているのはKDDIだけだと思います。


話を都心部に戻すと、東京は確かに多くの事業者がファイバーインフラを引いていますが、おそらく一社でエンド・トゥー・エンドのサービスを宅内まで提供できるのはNTT東西か、KDDIくらいではないでしょうか。
(東京メトロなどはラストワンマイルがないので、駅まで取りに行かなくてはいけない。通常は駅から皆さんの働くオフィスやデータセンターなど、最寄り事業所までは最後の区間をNTTなどを使うことになる。)




以上、今回はどんな事業者がファイバーインフラを持っているか、簡単にまとめてみました。
次回に続く。







 








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