2013年4月20日土曜日

MAN構築のすすめ(17:メトロ光ファイバーの規格)

さて、このブログは大学の講義ではないのであまり物理インターフェイス規格などには触れて来ませんでしたが、なかにはそもそもシングルモードファイバーって何?という方も居らっしゃる方も居るかもしれません。
自分はシスコのエンジニアでそんなの日常やっとるから知っとるわい、という方もいらっしゃるでしょう。
ダメ出しも含みますが、LANで使用する構内ファイバーケーブルと通信事業者が使用する長距離(概ね500m以上としましょう)は仕様が異なります。


マルチモードファイバーケーブル
 構内LANで主に使用されるファイバー。ビル内の配線は通常のこファイバーが使用されます。

マルチモードファイバーにはタイプに寄ってOM-3, OM-4などありますが、これらは2000年代に入って登場した10Gや40G、あるいはそれ以上の高速インターフェイスを考慮して規格も進化しています。OM-4など最新の規格のファイバーを導入することで、1GBから10GBにインフラをアップグレードした時、通信可能な到達距離が10Gインタフェースごとに保証されています。
OM-4なら10GBで550m(10GBase-SR 、850nmで最長550m)まで保証されています。なお、今後これ以上の速度のインターフェイスが出た場合、距離に寄っては高速なネットワークインターフェイスを使用した際、到達距離が短くなることになります。将来40Gや100Gにアップグレードする場合、ケーブルには互換性があっても距離の制限でアウトということもあります。近距離のオフィスLANなどの構内ネットワークインフラをアップグレードするときは、現在敷設しているファイバーがどの規格のものか、把握しておく必要があります。


<参照>

Panduit OM-3
http://www.panduit.com/heiler/TechnicalReferences/OM3%20Tech%20Ref%20TR23%20EMEA.pdf

Panduit OM-4
http://www.panduit.com/heiler/TechnicalReferences/TR33%20OM4.pdf



さていよいろ本題のシングルモードファイバーに入ります。
この規格、日本国内で通用するJISと国際規格のITUとで表記されている場合がありますが概ね、NTT東日本が使用しているのはJIS C 6835 (G.652Bと互換性あり)という規格です。
以下に一般的に普及している規格を挙げます。


<日本でもっとも普及している(事実上の共通規格)のファイバー規格>

 -ITU-T G.652.B
 -JIS C 6835
 -IEEE802.3ae (10GBase-LR, ER)


<DWDMの長距離電送に適した分散シフトファイバ (DSF, 1550nm)>
 近年、DWDMに特化しDWDMが使用する1550nm付近の遠距離通信に最適化したファバー。

 -ITU-T G.653
 -JIS C 6835

これ以外にもノンゼロ分散シフトシングルモードファイバ規格などあります。これも長距離電送に適しており、信号劣化が少ないのが特徴です。
 -ITU-T G.656


参照元
フジクラ電線
http://www.fujikura.co.jp/products/tele/o_fiber_cable/td1029.html

NTT東日本
http://www.ntt-east.co.jp/info-st/constip/cons1/pdf/gijutsu/betsu27-4_e.pdf

シスコプレス
http://www.ciscopress.com/articles/article.asp?p=170740&seqNum=7




どこで光信号は減衰するか?
光信号は、放っておいても距離を進めば進むほど弱くなり、自然に減衰していきます。
これ以外にも大きな減衰箇所として以下の部分があります。

 -コネクタ接続部 (おおむね-0.5dB)
 -融着損失 -0.2dB
 -遠距離に寄る自然減衰 (概ね1kmで0.2 - 0.4dB程度)


なお、仮に一社からエンド・トゥー・エンドでファイバーを借り受けたとしても、上記の損失は必ず発生します。またサービス分界点(デマケーション)から自分の機器に接続するだけでも接続点x2,ローカルファイバーの距離による損失。もしパッチパネルを使用し、研磨処理ならそこでもコネクタ接続損失がありますから、一気に1-2db落ちることも珍しくはありません。
都内23区でファイバーを借り受ける場合は、それほど距離による損失は起こらないと思いますが、複数の通信事業者をまたぐ場合、かならずその接続点でコネクタ損失が発生します。(分界点は通常コネクタで自社敷設区間のトラブルシューティングをする必要がありますから、融着で他社に引き渡すということはまずありません。)

なお、コネクタタイプとして、最近は小型のLCコネクターが構内配線では流行りですが(SFPのGBICが普及したため。)、通信事業者は旧来からあるSCコネクタで渡すケースが多いようです。これは接続した時の精度が関係しているためと思われます。当然中心点がずれると接続部分で大きな光信号ロスが発生しますので、デマケーションはキャリア推奨のインターフェイスを使用するのがお勧めです。

米国では、その国土の広さ故、中継機器を極力省くため、融着で80km-100km伸ばすということは当たり前のように行われているようで、これが到達距離が10GBase-ZRなどで80kmといった長い距離をサポートできる理由でもあります。日本では、特に地域電話会社は通信局社ごとにコネクタ接続が発生し、始点から終点まで融着で繋いでいくという事はせず、要所要所でコネクタ接続を行います。これが日本で伝送距離が延びない理由のようです。(局舎を通過するたびに減衰値が大きくなる)
他の長距離事業者では融着で接続してくれる事業者もあるようですので、このあたりは使用したい通信事業者に問い合わせてみると良いでしょう。

以上、今回はファイバー規格と伝送ロスについて述べてみました。



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