みなさんは大規模な光ネットワークの事故というのをあまり新聞やテレビでは見かけたことはないと思いますが、これは多くのキャリアが冗長パスをもっていて、一ヶ所できれても迂回路が設定されており、セルフヒーリングと言ってほぼ瞬時に迂回経路に切り替えてくれるためです。
最近ニュースで取り上げられるものといえば携帯電話事業者のそれも、メールサーバーだとか、携帯事業者内のネットワークの問題による接続断のニュースが多く、そのほとんどのケースで詳細はメディアに公開されていません。
話を光ケーブル、特にメトロ幹線の話に戻しましょう。
たとえばWindows PCからPINGを連続的に打ち続けても回線断を検知することはできないかもしれません。
それはセルフヒーリングによる復旧の速さによるものです。(多くのDWDMスイッチはこの機能を備えています。)
セルフヒーリングは最近のネットワーク機器では0.5秒以内で収まったりしますからエンドユーザーがほとんど断線があったことを意識することなくネットワークが使えるようになっています。
(ただし回線契約に寄ってポイント・トゥー・ポイント、冗長無しだとこのようにはいきませんが)
0.5秒程度の回線断なら、ほとんどのケースでセッションが途切れることもありません。
とくにL2あるいはL3のレベルでそれぞれ冗長されていると、一般ユーザーはほとんど断線を認識することは無くなって来ました。
10年以上前、RIPというプロトコルがまだ使われていた頃は切り替わるのに30秒、あるいはそれ以上時間を要するということもありましたが、いま大企業でRIPをメインのプロトコルで使っているところは皆無でしょう。
サービスレベルが向上していることは喜ばしいことです。
<海底ケーブルの断線事故:漁船による断線事故>
日本国内は土木工事の手続きや管理がしっかりしているせいか、あまり土木工事に関わる事故は耳にしませんが、国際回線で使う海底ケーブルは実は非常にケーブル切断事故が多いのです。原因は底引き網漁です。
漁師が底引き網を仕掛け、通信ケーブルも一緒に引っ張ってしまい、断線する事故はたびたび耳にします。
海底ケーブルも迂回路は当然設定されていますが、太平洋のリング迂回だと、ディレイがある日突然倍以上になって急にネットワークが遅くなることがあります。これは最短のケーブルが切れ、迂回路にトラフィックが回されたからにほかなりません。
<海底ケーブルの断線事故:地震による断線事故>
もっとも有名なのは2006年に起きた台湾沖での地震による断線
http://blogs.itmedia.co.jp/infra/2006/12/post_83f8.html
また直近では2011年の東日本大震災でも複数の海底ケーブルが影響を受けています。
http://agilecatcloud.com/2011/08/24/3-11-%E3%81%A7%E8%A2%AB%E7%81%BD%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%81%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%B5%B7%E5%BA%95%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB-pc-1-%E3%81%AE-%E5%BE%A9%E6%97%A7%E3%81%BE%E3%81%A7/
なお、IT-Proの記事でも311直後の海底ケーブルの損傷状況をレポートしています。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110615/361405/
海底ケーブルが断線すると大変です。船で現場に駆けつけるまで場合によっては1-2週間、復旧作業には数週間以上かかることもあります。
また、東日本大震災では多くの陸上の通信インフラも打撃を受けました。津波で飲まれた地域もそうでない地域も多くのインフラが何らかの影響を受けています。
震災の数カ月後、石巻のNTT局舎をみにいく機会がありましたが、その様相たるや惨憺たるものです。津波の破壊力とは恐ろしいものです。
<鉄道事故が絡む断線事故>
鉄道事業者は実は有力な物理回線提供事業者でもあります。
最近はあまり鉄道が絡む事故は耳にしませんが、以前、2002年に名鉄の列車事故の影響で、線路沿いを走る光ケーブルも影響を受け、通信断が発生するという事故も起きています。
通信事業者が鉄道事業者から光ファイバーの芯線、あるいは管路を借りているケースは珍しくなく、一度大きな列車事故が起これば、物理的にケーブルも損傷する可能性があることは言うまでもありません。
<道路工事に絡む接続断>
この他にも工事に絡む事故もときどきあります。
地下通信ケーブル誤切断 彦根で工事業者 配信19時間停止
http://www.47news.jp/localnews/shiga/2009/02/post_20090204020434.html
あと、直接通信ケーブル断線や焼失といった事故にはいたっていませんが、東京メトロの白金高輪駅でボヤ事件があったことを思い起こす方もいらっしゃるかもしれません。これは乗務員のタバコが原因でしたが、こういったリスクはあらゆる事業者につきものです。
<送電線の事故>
えっ、送電線の事故って光ファイバーに関係ないんじゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。でも最近は送電事業者(例えばJ-POWER)などが高圧線と並走する光ファイバーの賃貸事業も行なっています。
直近の事故では2006年に荒川でクレーン船が高圧線を引っ掛け、都心部に停電を引き起こす事故がおきています。(この当時はネットワークは影響はありませんでしたが)
更に前、1999年には入間川で自衛隊機が墜落、その際に高圧線を引っ掛けて断線する事故も起きています。
http://www.asyura2.com/0601/nihon20/msg/486.html
首都圏の場合、高圧線を使った光通信はメトロエリアではほとんどありませんが、数百キロの長距離の場合、事業者によっては無くもない話です。
高圧線は比較的まっすぐ山の稜線から稜線に走っている場合が多く、直線距離で見ると国道の管路に比べて距離が短いということで、すこしでも距離と遅延を改善したい場合は有利です(ほんのすこしの差でしかありませんが)。
事故は絶対に怒らないものではありません。自然災害、人為的ミスなどなど、あらゆる場面で事故が起こることは想定しなくてはなりません。
もし、あなたの企業が幹線のネットワークを構築するなら、物理的に重複しない経路で、なるべく別々の経路、事業者を選ぶべきです。
以上、今回はケーブル切断の事故について取り上げてみました。
つづく
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