素朴な疑問:なんで鉄道会社が通信事業をやってるのか。
これには歴史を少し学ぶ必要があります。例えばJR東日本を例に取ってみましょう。かつてこの企業は国鉄という国が所有する鉄道事業者でした。国策で北は北海道から南は九州まで鉄道網が敷設され、明治時代から昭和にかけて国鉄の鉄道ネットワークが構成されてきました。ネットワークが出来上がってくると連絡網としての通信の需要も当然必要になってきます。国鉄は自分たちの運用も目的のため、鉄道電話という自前の電話専用線網を引いたのが始まりです。
それが昭和後期から平成にかけて進化し、光ファイバーも自前で引くようになりました。ちなみに光ファイバーは鉄道事業者においては音声用ではなく列車運行などの機器管理用で多く敷設されています。
80年台半ば、国鉄が分割民営化されるのとほぼ次期を同じくして、旧電電公社(現在のNTT地域会社)も分割民営化しました。
この時に、NTTの競合事業者として登場したのがかつての日本テレコム、現在のソフトバンクです。(ソフトバンクの母体はこれだけではなく、複数の事業者が母体となっていますが)
長距離電話のサービスを日本テレコムの鉄道網の通信インフラに載せて長距離電話事業に参入したのが始まりです。
旧国鉄以外にも多くの民営鉄道会社がありますが大手の私鉄はやはり専用の鉄道電話網を持っていて、NTTを使わなくてもお互いの事業所が内線電話で通じるようになっています。
電力会社も状況は似たようなものです。自分たちの持っている電柱や地下の配管などの経路に通信ケーブルを敷設し、自前のネットワークを構築してきました。この余剰ファイバーがダークファイバーとして他の事業者や民間に貸し出されています。
ファイバーインフラを所有する事業者としてはメジャーな順に以下のようになります。
1)旧電電公社系(電電公社所有の通信インフラはNTT地域会社に民営化と同時に移管)
2)旧国鉄などの鉄道系
(旧国鉄母体の日本テレコムの通信インフラはその多くはソフトバンクが継承)
3)電力系
4)高速道路系(旧日本高速通信)
この事業者は主に高速道路の配管にケーブルを引いて通信ネットワークを構築していました。当初はトヨタ、日本道路公団などが資本の母体でしたが事業は結局軌道に乗らず、最終的にKDDIに吸収されています。
かつては大手電力系も9電力の各電力会社にそれぞれ通信事業の子会社があり、光ファイバーのインターネットサービスなどを提供していましたが、東京電力については子会社だった旧パワードコム、それに東京電力が自前で提供したTEPCO光、旧東京電話などはすべてKDDIに事業移管されており、KDDIと電力系の通信事業者の連携が目立ちます。関西電力系のK-Opticomなどは相変わらず独自に事業展開しているようですが、他の電力系の子会社はKDDIとの一部または多くの分野で協業が進んでいるようです。
東京電話はNTTが民営化されて以来初めての地域電話を提供できる地域競合電話会社だったのではないでしょうか。東電は自分たちが街中に持っている電柱をフル活用し、自前のインフラで電話事業を展開しましたが、結局携帯電話の普及スピードにあっという間に追い抜かれ、家デンを含む地域電話事業は劇的に普及することなく事業は収束し、最終的にはKDDIに吸収されて行きました。
忘れていました。CATV事業者も光インフラの展開事業者としては大手ですが、上記の鉄道系や電力系に比べると光インフラ整備を始めたのは随分あとからですから、ケーブルTVのシェアとしては大きくても通信事業単体で見るとそうでもないという状況かもしれません。(ここ最近、光インフラが普及していますがあくまでも採算が取れる首都圏が中心)最近はKDDIがJ-COMと協業し、ケーブルTV事業者と通信事業者の協業も始めていますから、KDDIの光インフラのドメインはどんどん広がる一方ですね。
これに比べるとソフトバンクは旧ボーダフォンが持っていた通信インフラと日本テレコム系のインフラ、かつて存在した国際電話のIDCのインフラは持っていますが、積極的に光インフラを自前で構築することはせず、NTTや他社の光のインフラを借りて自前のネットワークを構築するというビジネス方針のようです。都内では旧母体の日本テレコムなどのマンホールやファイバーを見かけることはあっても電柱でソフトバンクが自前でラストワンマイルを引いている例はほとんど見かけることはまずありません。ラストワンマイルは他の事業者から借りればよいうという方針のようです。
通信事業者のルーツの話を始めると長くなるのでこのへんにしておきましょう。
つづく。
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